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【後編】JUN/BANTY FOOT-世界が広がっても、おれの本質はレゲエだけ

2016/07/10

サウンドとして王道的にステップアップし、悩みながらも突き進み、クラッシュ参戦を経て気付いた自分の役目。
居場所を探すのではなく”自分たちでつくる”と定めて見据えた、将来のビジョンとは?

 

多方面からレゲエを考えるようになった、MEGARYUとの出会い

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"サウンド"というカタチをエンターテイメントとして自立させたい

―この前後から、岐阜のMEGARYU(※1)のバックDJとしても活動(※2)していましたね。
「彼らは幅広いフィールドで活動していたから、レゲエ以外の音楽ジャンルを見る機会も劇的に増えたね。改めて自分の立ち位置を振り返ることが多かった時期なの。

例えばレゲエのダンスだと、オムニバス(※3)形式の座組みでしょ。アーティストやサウンドなどを含める演者も裏方もバラバラのものを集めて、一つのイベントとして組み立て、1000人のお客さんを集める。

けれど世の中には、ワンマンとして一組で10000人を呼べるアーティストがいる。
おれは今までオムニバス要員の一人として現場に呼ばれてきたけど、自分の名前をメインに据えるやり方もすごく魅力的に思えたの。
自身が持つ世界観・音楽性・メッセージ性をストレートにお客さんに伝えられるし、表現することもできる。要は、自分たちの色を薄めずに済むんだよね」

-広い世界を見たことで、敢えて自分たちを、音楽を構成する一つのパーツとして掴んだとも言えますね。
「MEGARYUが所属する事務所の社長だった故・加藤学さん(※4)から教わったことも多かった。

『人の曲をかけて自己表現するサウンドという形を、正当に、世の中に広める方法を考えろ』と繰り返し言われたんだ。
サウンドとしての在り方、レゲエとビジネスの絶妙なさじ加減、音楽を広めるノウハウの考え方とか。音楽を生業にする以上は権利で演者を守る知識が必要なんだってこともね。

でさ、おれはこの頃までに経験したすべてのフィルターを通して"サウンド"というカタチを、エンターテイメントとして、大きな音楽の世界に広めたいと思ったんだよ。

これまではクラブ文化的にごり押ししてた部分もあったけど、それだけじゃできないことが多いって気付いたんだ」

 

エンターテイメントとして音楽をとらえた時に、見えた世界

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『ビジネス領域×自分のレゲエを広める方法』という考え方を得て気付いた事

-ビジネス領域の方法論については、受け入れられにくい風土がシーンにはあるかと思いますが、そのあたりはどう捉えていますか?
「おれの周りにはいつも、ピュアでアングラなレゲエと、ビジネス領域の中で生かすレゲエの2つの環境があった。

これさ、どっちもすごく面白いんだよ。
確かに、クラブ文化にはビジネスシーンを排除しがちな空気感がある。見えない苦労を抱えてストイックに向き合ってきた人ほど、今後の在り方を悩みやすいのは仕方ないと思う。

けど、自分が知らなかったゾーンには、今までの自分になかった知識や気付きが絶対にあるからさ。生かすか殺すかは自分の志しだいじゃないかな。

どんな音楽でも、演ることには真剣さを求められる以上、多様な価値観や、違うやり方を受け止められるマインドを持った人こそ未来の道を築きやすい部分は確かにあると思うんだ。
おれはできる限り、知っていきたいと思ってる」

 
-純粋に、仕事面としての質問を一つ。サウンド活動のマネタイズについては、これまでどのように工夫してきたのでしょうか?
「クラブシーンでいうなら、現場営業やバイトの収入でCDを出し、売り上げを獲得するのがサウンドマネタイズの主流だよね。

制作費の内訳としてはダブ(※5)代、ジャマイカ渡航費用一式、CD制作費、CDプレス費。おれも会社を辞めた後は、あたりまえだけど生活費とダブ代を稼ぐためにバイトしてた。

今はラジオの仕事やイベント運営とか物販など、音楽現場だけでマネタイズしようと思ってないからいろんな可能性に挑戦してるよ。
2015、2016年と、J1サッカーリーグで戦ってる名古屋グランパスの、シーズンクラブオフィシャルサポートソング(※6)も手掛けたりしたね。

フィールドを超えて仕事ができる縁があるなら、うまく生かしていければいいなと思っている」

 

新たな活躍フィールドを得て、世界が広まった今

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レゲエと一生付き合える環境を提案して、実際に音を届けたい

-2008年からZIP FM(※7)でレゲエ専門番組【REGGAE REVOLUTION(毎週金曜)】をスタートしましたが、新たな転機となりましたか?
「思い描いているゴールを実現するのに欠かせないツールの一つが手に入った感じだね。
“レゲエの魅力について、時代と人に合わせた伝達方法を行っていく”のがおれの仕事だから、本質を大切にしながら、日本人に合わせた形で広めることをテーマに番組を展開してるよ。

レゲエは色んな作法があるから、良さやルールを伝えるには、取扱説明書=トリセツが必要なんだって思うのね。

例えば、ボブ・マーリーは知っていてもガンフィンガー(※8)は分からないおじいちゃんや、10年前に現場に来てくれてたお客さん、いい曲だって分かれば本能で反応してくれる子どもたち。それぞれの年代にはそれぞれの心に響く伝え方があるんだよね。

だからおれ、自分がトリセツ係になって教えたいし広げたい。年齢を経て変化するファンの属性や環境に合わせ、楽しみ方も提案していきたいんだ。

日本人のナショナリティとして、『みんなと同じがいい』『バリエーション好きだけど飽きやすい』っていうのがあるから、そこに寄り添いながら長くレゲエを聴かせられるビジョンを描ければ最高だよね。
MIX CDやアルバムを購入する人は10年前より減ったけれど、レゲエが生活の一部となり、聴き続けている人は変わらずいるんだからさ」

 
-ZIP FMとの関係について、教えてください。
「ZIP-FMはBANTY FOOTの理想や目標に共感してくれている、強力なパートナー。いろんな角度からサポートしてくれてるんだ。
でもぶっちゃけ、今のおれらじゃまだまだ彼らのビジネスパートナーにはなり得てなくて(笑)。早く恩返ししなきゃって、頑張っているところだね。

日々の具体的なプロダクツだと、ZIP-FMとは、ラジオ番組やCD、その他の音楽活動なんかのいろんなものごとを一緒にやらせてもらってる。
多様なソリューションを経てレゲエを伝えられるっていう喜びは大きいし、これは自分たちだけではできなかったことだから、本当に感謝しかない。

毎年、栄の真ん中でやってるフェス【DIRECT-SAKAE REGGAE FES-(※9)】も彼らとのプロジェクトなんだけど、これはおれらにとって、一般の人もレゲエが好きな人もどっちも音を楽しめるプラットフォームなの。

ありがたいことに右肩上がりで規模も拡大していて、それってお客さんからのストレートな評価やリクエストだと思うから、純粋に嬉しいよね。
 
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おれ、演者の世界観をすみずみまで共有しながらプロジェクトを実現できるのは役割分担で動けるチーム制がいいと思ってる。
だから、共通のゴールを掲げてZIP-FMとチームを組めていることがすごく有り難いんだ。

レゲエ畑じゃないスタッフもいるけど、『こういう言葉のほうが一般のお客さんに伝わるよ』なんて社会の目線で教えてくれることもあるんだよね、それって貴重でしょ?

逆にレゲエの作法でできないことは受け入れてくれるし。遠慮なくディスカッションできるこのチームは最高だと言い切れる。

それぞれがその道のプロだと、個々が研究してより精度が高くなるしね。
細かい気付きや提案を共有して、同じゴールに向けて統一感をもって走れることの有難さを日々実感してるよ。

逆に、BANTYとして十分なエンターテイメントができないプロジェクトはやらないということもチームの共通認識において、イメージ通りのクオリティを保つように努めてる」

 

様々な位置から観察したからこそ掴んだ、シーンの課題感

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-努力の場も華やかな場も体感してきたからこそ、今のシーンに対して思う事はありますか?
「おれはブームの恩恵をあまり受けてきていないほうだから、全体をすごくフラットに見ているんだけど。
レゲエで食べていける人数の増減で語るならば、ありえない量産体制であったことと、演者として個性の確立をせんかったのが、生き残れる人が減った原因じゃないかなぁ。

アーティストもサウンドも、全てのブッキングを受けることが売れている指標になっていた時代が、確かに存在したと思うしね。

元来アーティストの売り方っていうのは、時間も手間もお金も割いて準備期間を設けて、独立したプロジェクトとして、チームを組んで動くべきものと思っているんだけど、クラブシーンではアーティストの自主性だけで走ってしまうし、走らざるを得ない。

特にレゲエは何でも量産傾向にあるから、お客さんに飽きられる。そこも踏まえて、計画をちゃんと立てたほうがいいと思えるんだ。
冷静に考えると、アーティストのライヴにはある程度の非日常性があるべきで、“売れている感”の獲得に躍起になっちゃいけないと思ったりさ。

ここはやっぱりMEGARYUチームと長く行動を共にさせてもらっていたから、冷静に掴むことができてるんだと思う。

何にしたって活動するための大義名分の有効範囲は人それぞれだけど、『シーンのため』って言葉一つとっても シーンが活性化することで見返りを期待するのか、しないのかでゴールって違うからさ。

もっと自分の内面と向き合って、シーンと共にどう自己実現したいのか、正直に目標を定めることが必要かもしれないよね」

 
-演者としての強みや個性など、ブランディングという概念も大切ですよね。
「ブランディング=オンリーワンの実績+強みだよね。

これまでほとんどのサウンドにとって、ブランディングのための媒体は現場かミックスCDや、時にフリーペーパーだった。
今はインターネット環境の発達で発信が簡単になったから、自分にしかない情報伝達方法とか媒体を持つのが重要じゃないかなと思う。俺にとってはそれがラジオだね。

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レゲエの演者たちはそのあたりの強みが圧倒的に足りていないから、そこを補って発展させていかないとって感じるよ。
だってブランディングで成功している人ほど生き残ってる傾向は、確かにあると思うから」

 

いろいろなツールを組み合わせてレゲエを表現することが、自分の役目

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若い世代はゴールを見定めたうえで、とにかく動き続けていってほしい

―若いサウンドに向けて、アドバイスしたい事はありますか?
「サウンドにはどこででも現場を作れる機動性があるから、レゲエ好きな人のための入り口としてすごくいいんだよ。
若いサウンドほど、自分たちの身内や若いお客さんにレゲエの楽しみを伝えるために、規模は小さくてもいろんなダンスをがむしゃらにやってってほしい。

で、実績と経験を積んだらブランディングについて考えるのはすごくいい方法だと思う。
MCの内容や曲のかけ方だけじゃなくて、サウンドの運営体制やビジュアルイメージ、スタッフ構成まで含め、理想の形をとことん考えたほうがいい。
計画するってことは、自分たちが動くためのガイダンスにもなるからね。

後は、やれることは何でもやってほしい。売れるために努力することって悪いことなんかじゃないし、その努力に向き合える人ほど成果が出るのが音楽の世界だからさ。
誰に文句言われても、人の価値観を認めながら、やり切ってほしい。

あとね、おれにとってのOG君(※10)みたいに、メンターであり超えたい壁でもあるっていう存在を持つのもいいと思う。
身近な目標があると、追いつこうと思って死ぬ気で頑張るから(笑)、自分の能力の底上げになる」

 
-JUNが生き抜くための、これからのビジョンを教えてください。
「サウンドとしての目標は、ワンサウンドで行ききること。プロデューサーとしては楽曲制作。プロモーションとしてはTVやメディアに露出しにくいレゲエ観を覆すこと。
BANTYでやりたいこと、やらないかんことはいっぱいあるわ。そのためには俺がもっと力を着けなきゃいけないね。

おれは、いろいろなツールを組み合わせてレゲエを表現するやり方を学ぶことができたけれど、結局どんなジャンルの音楽を知っても、アウトプットとしてはレゲエじゃないと嫌なんだよ。
何を取り入れても、おれの本質はレゲエなんだって思う」

 

価値観の上限を軽々と飛び越えるレゲエのフィールドで、理想を極めたい

―JUNという人からは、広い視野を生かそうとする意思を感じます。
「知らないもの、新しいものに、根幹とか価値観を壊されるのが好きなんだ、おれ。自分が知らない方法があるときに調べるのも好きで、極めたいタイプ。
レゲエはそれがすごく多かったから、ハマりにハマって今があるね。

でもサウンド始めてからはずっと、もっとでかいステージで、もっとでかいことをやりたいと願い続けてる。
満足は1回もしたことない。これからも恐れずに、理想を叶えるために渇望し、動き続けるんだと思う」
 

 

Annotation
(※1)MEGARYU/MEGAHORN(Deejay)、RYUREXからなる岐阜県出身のユニット。現在は活動休止し、個々でソロ活動を行っている。
(※2)岐阜のMEGARYUのバックDJとしても活動/2000年代後半にかけ(※1)MEGARYUのライヴ時におけるバックDJとしてJUNがツアーなどに同行していた
(※3)オムニバス/すでに世の中に存在する作品を集め、一つにまとめて一作品とする形式。音楽業界では「コンピレーション(特に選曲方針が存在する)」も類義語とされる。
(※4)故・加藤学/日本のレゲエ・ジャーナリズムの祖の一人。1980年代初頭よりレゲエの雑誌を私費で発行し、87年『レゲエ・マガジン』を立ち上げ、同誌編集長を務める。退任後は音楽事務所を設立し、レゲエを広める啓発活動に従事。2011年永眠。
(※5)ダブ/サウンドが自分たちのためだけにアーティストに特注した曲を指す。
(※6)名古屋グランパスの、シーズンクラブオフィシャルサポートソング/2015年[RUN this way feat.MEGAHORN]、2016年[RING feat.NEO HERO]
(※7)ZIP FM/愛知県のFM放送局。ZIP-FM 77.8。
(※8)ガンフィンガー/レゲエミュージックにおいて、興奮度を示すハンドサインの一つ。指鉄砲。イベント等でオーディエンスのテンションが高まった際、銃を空に向けて空砲(実砲だったという説もある)を打った事から。
(※9)DIRECT-SAKAE REGGAE FES-/2015年より名古屋市栄にて、ZIP FMとBANTY FOOTが中心となり展開する野外フェス。
(※10)OG/TOP SHOTTA OG。三重のサウンドARSENAL JAPANを立ち上げた本人で、メインMCを務めていた。2015年に引退。

 

JUN/BANTY FOOT
愛知県名古屋市出身。MC/Selector。2001年に名古屋にてBANTY FOOTを結成。レゲエシーンで着実にキャリアを築きながら、現在はラジオやCD、フェス、クラブイベントなど様々なアプローチからレゲエを広める活動を行っている。
●JUN official twitter  @BANTYFOOT
●official site BANTY FOOT
●official Facebook  BANTY FOOT
●official blog ONE STEP FORWORD

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