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【後編】STIFFY a.k.a TAKE/BOTH WINGS-恐れずに、続けることを大切に

本当に現場が好きな人。BOTH WINGSのコアであるSTIFFYを知る人は、そう評する。
1990年代後半から現場に居続け、人と音の流れを体感してきたこそ男から見る、音楽シーンの今の姿とは?

 

定位置からシーンの流れを見つめ、思うことと感じること

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現場を俯瞰する中で感じる、変化したシーンについて

-STIFFYから見て、率直に、今の現場はどうですか?
「まず、お客さんが減ったのをすごく感じる。
理由はたくさんあるけれど、純粋に、ダンスホールでインターナショナルヒットがないからだというのも大きいんじゃないかな。世界レベルで見ると、一般の人まで魅力が届くような流れも破壊力も、今はないように思える。

日本の日常的な現場と、華やかで大きな現場でかかる曲の種類が違いすぎるのも、表層とコアの差をすごく表していると思う。

でもそれらはただの結果で、決して悪いことではない。レゲエには、Hiphopやポップスの要素を取り入れながら進化するサイクルがあるから、大枠で眺めると、どの時代にもある安定期が今なのかもしれないしね。

だけどそんな熟成期間だからこそ、ジャマイカの曲の面白さや、レゲエを深掘りする楽しさを、お客さんにもっと知ってほしい気持ちはあるかな」

-成熟したシーンが次のステップに行くには、アーティストやサウンドにこそ若手の力が必要ですよね。
「そうだね、若い世代やライトなファン層にどうやってレゲエの魅力を伝えるか、がカギだよね。レゲエのアイコンとなりうる若いヒーローを、過去の土壌を生かしながら生み出していかないといけない。

でも事実、ヒーローは関東にはちょっと少ないよね。若手がアクションを起こし、才能を花開かせる場所自体がないんだよ。

それこそ若手が自分で切り拓かないといけない部分ではあるよ。でも、俺ら世代が用意してあげられていない、という悔しい現実でもあるんだけどね」

異なる東西シーンの空気感について、思うこと

-現状の人不足が、シーンのそのほかに与えている影響はありますか?
「東京に限れば、いわゆる裏方というか、制作サイドを担う人間がいないから専門職として全体俯瞰できる人が足りない。
演者のサポートをしてくれる人が少ないから、演者が活動の全てを一人で背負い、疲弊しているところはあると思う。

東京の中心部を支えていた演者が年齢を重ねたことも大きいよね。家庭や子どもを持ったことで生活環境が変わった人が多いから、活動の形を変えざるを得ない人も増えたしね。

それは別にシーンの熱量や流行のせいではなくて、あくまで演者側の都合としてね。でも先輩として若い子を数年単位でぐいぐい引っ張っていける人達も、環境の変化とともに減ったと思う。
その選択が多少なりとも、東京の現場に与える影響があるように感じてるよ。

あとは地域の特性もあるけれど、屋内外で音を出せる環境が少ないことや、若者がフックアップしされる機会が少ないことなんかが、東京のクールな風土に相まってちょっとうまく回っていない感じはするかなぁ。

チャンスがうまくつながり循環するようなシナプスが形成されていないというか」

-日本には、新しいものを受け付けづらい風土があります。レゲエシーンにも多少なりとも存在するでしょうか?
「うーん、そうだね。これまでのレゲエは正直、良くも悪くも気持ちが強すぎて、あるべき論でできないことが多かったからこそ閉塞した部分だってあるんだよ。自分たちだけの独立したものを作りたいっていう願いと反しているジレンマを抱えたりさ。
誤解を恐れずに言うと、それで八方塞がりになるくらいなら、新しい価値観を生み出し、定着させてもいい時期なのかなって思うよ。

結局俺らがやってることは、ジャマイカと、ジャマイカ人が先駆者として開拓してきたものを借りているということなの。俺らはジャマイカのことは全部できないし、ジャマイカ人にはなれない。ちゃんと理解しないといけないんだ。

本国ではゲットーから這い上がるための手法の一つにメイクマネーがあって、それを実現するための音楽って面もあるけど、日本にはそれを公言しにくい土壌の違いがあるでしょ。
ジャマイカの全てを踏襲した生活を送ることは、暮らしが確立されている日本では難しい。文化も生活水準も何もかも違うんだから。

だから日本人は、大切な借り物をどうやって伝えていくか、その切り口や方法を考えていかないといけない。本質を大切にしながらね」

BOTH WINGS結成15周年を迎えて、変わったことと変わらないもの

『もっと楽しいことができる』可能性を、より追求するように

-2016年で結成15年目となりました。STIFFY自身に変化はありましたか?
「変化したこととしては、演者としてのメッセージやサウンドの方向性含め、お客さんに“伝えられる”ことは何か、相手ありきで交わせるものは何かって部分に重きを置くようになったってところかな。

演者は、お客さんがいなければ成り立たない。俺らが伝えたいことを押し付けるのではなく、お客さんが欲しがるレゲエのイメージに近づけながらも、いい意味で裏切る面白さを仕込む工夫が必要なんだよね。
その辺は年齢を経て実感できるようになったし、多少なりともやり方が分かってきた…… かなぁ?」

-では、変わらないものは?
「純粋に好きだからやってるって部分だよねー。一生賭けて面白がれる音楽に出会っちゃったから仕方ないよね(笑)。
まぁ、この年になったら、もっとゆっくりレゲエと付き合ってるかと思ってたけど(笑)。自分でも予測不能な人生が送れるくらい、刺激的な音楽にハマれて良かったと思ってるよ」

サウンドマンとして、ダブプレートにかける思いを伝えたい

-レゲエでなければ得られない喜びは何ですか?
「新しいダブ録った時は今でも嬉しいね! ダブプレートってレゲエにしかない文化だし、やっぱり特別な思いがあるものでさ。借金してジャマイカ行ってアーティストと直接交渉してまでも録りたかった、憧れのものなんだよね。

まぁ、ダブをかけて手ごたえがある場所も今よりたくさんあったから、録りがいもあったし。そういうのひっくるめてレゲエを象徴するアイテムなんだよ、サウンドマンにとってはね。

だから最近では、サウンドがプレイすることへの投資がしたいっていう思いが強くなってさ。2016年からダブプレートのセッションナイトを主催することにしたんだ(※1)。ダブってものの面白さが、少しでも伝わればいいなと思ってるよ。

若いサウンドに対しても、ダブをかけられる場所を提供してあげたいんだよ。オーディエンスからの手ごたえを感じやすい場所があることで、ダブを録る面白さに目覚めてもらえたらっていう狙いもある」

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「あと、お客さんが楽しそうにしている姿を見てる時は本当に喜びだね。
レゲエってオーディエンスの反応がダイレクトだから、自分が一生懸命プレイすることで、お客さんから得られるアプローチが多いんだよ。

喜ばせたい欲求が満たされると言うか、『俺がこんなに好きなものでお前らが喜んでるのが、俺は嬉しい!』みたいな充実感が得られる(笑)。だから演者はみんな本気でやるしハマるんだと思う」

2000年代以降を代表する東京サウンドの一つとして、若者へ伝えたいこと

チープでも訳分かんなくてもいい、もっとがっついて行け

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-若い世代に向けて、伝えたいことはありますか?
「自分たちで何だってできる環境があるよね。ネット環境が整っているから発信しやすいし、機材も手に入りやすい。曲を作って売る方法だっていくらでもある。あとは、こういう恵まれた環境を生かした自分なりのアプローチを考えるだけ。

俺らの世代はそれがフライヤーや現場、ミックステープやCDがメインだったけど、今は発信する方法はいくらでもある。活用しないのはもったいないことだよ。

音楽ってさ、作って待ってるだけじゃダメなんだよ。まずは自分たちを見てもらう場所を作り、存在と作品の影響力を強め、体系的にセルフプロモーションする取り組みが必要なんだ。

なのに若い子の動きを見てると『もっとがっつけ!』って思う機会は多いよ。同世代の演者で集まって、若いお客さんに何かを届けることを目指して動いてほしいね」

-経験がないために”動き方””やり方”が分からない若手も多いかと思いますが……
「うん、誰だって最初は分からないし、クオリティがいまいちでも当然。でも、体裁や主観に囚われすぎず、まずはやってみること。チープなやり方でも、アクションを起こすことそのものが大切。
ガンガンやってたら人目に止まりやすくなるし、周りの人がやっていない方法でもいいと思う。

作品性や演者としての世界観に自信があるなら、機材や売り方の質は次以降で高めていけばいい。とにかく、自分の能力のことをがむしゃらに信じちゃえばいいんだよ。そのうちに自信がつくし、過去やあるべき論に縛り付けられすぎるよりも、チャレンジできる道があることこそ恵まれているんだから。

あとはね、プレイヤーに集中したい演者ほど、いかに信頼できる裏方を確保するかは自分が成長していくにつれ大きな課題になると思うから、仲間づくりを心がけておいたほうがいいと思うなー。
初めのうちは課題はいっぱいあるけど、やりがいがあっていいんじゃない? 若手はまさに今、乗り越え時じゃないかな」

―STIFFYはレゲエと家庭を両立する先駆者の一人でもあります。両立はどのように?
「どっちも好きなことやれてるって思ってた。アウトドアや将棋や釣りとか、他のライフワークを持つ親父と一緒だよ、それがレゲエになっただけ(笑)。

ただ拘束時間が長いぶん、家のことやってから音楽に目を向けるようにしてる。そんなことを言っても今は父子家庭だし、子どもの年齢に合わせてうまくレゲエと付き合ってるよ。

親としては音楽を押し付けたことはないかな。あくまで、用意してあげられる環境の一つだと捉えてる。レゲエを選ぶかどうかは、子どもの自主性に任せたい。

子どもには、友達と築くものや、友達関係だからこそ影響受けあえるものがあるからね、だから親が与えるものよりも、自分で作る友達を大事にしてほしいと思ってるかな」

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-様々な環境の変化を経て、なお続けられる形を選んできて、今、思うことは?
「好きならずっと好きでい続ければいい、それだけ。
俺さ、『レゲエ辞めます』って言い方が苦手なんだよね。音楽聴くのを辞めるっておかしな言い方でしょ? 音楽との付き合い方は人それぞれだから、歳をとっても、立場が変わっても、長く付き合えばいいじゃんって思うんだよ。歳を重ねた分の付き合い方や、つながり方ができる音楽を、せっかく好きになったんだから。

可能性を生かすことと、チャレンジするってことは諦めたくないじゃない。やってみないと分かんないからさ、何でも。
意外と面白かった、楽しめた、やっぱりレゲエが好きだし続けたい、って思えるならそれでいい。わざと躓こうとしない限り、意外と何とかなるもんだよ。夢を叶える手段として選んだ人も、好きで伝えたいから続けたい人も、どっちも受け入れてくれるのがレゲエなんだよ」

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Annotation
(※1)ダブプレートのセッションナイト/STIFFYが主催するダンス[KICK OUT]。乃木坂CACTUSにて定期開催。

 

STIFFY a.k.a TAKE DATE
鹿児島県出身、東京在住。MC/Sel。2001年東京にてサウンドクルーBOTH WINGSを結成。サウンドシステム"TRAVELLERS BOXX"を携えながら、関東中心に各地の現場で活動している。
●Twitter @STIFFYBOTHWINGS
●Facebook takehito.t.tanaka
●Blog STIFFY or STIFF ??

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