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【後編】TAKAFIN a.k.a BACKYAADIE―ミュージシャンとしての未来へ

2016/10/06

経歴20年に至るまでタフに築き上げてきた、アーティスト/レーベルプロデューサーとしての道のり。
重要発信者の一人として最高峰に位置しながら、人知れず迷い悩んだこととは?

 

迷い、不安を抱き、それでも走り続けた20年

一本筋を通しつつ、未来へ向け自由な表現方法をつかむ意識へ

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-一人の音楽人として大きく意識が広がった、ということのように思えますね。なぜ、そのように変わっていったのですか?
「うーん、まず、これまでダンスホールシーンど真ん中でやってきて、歌い手は“こういうもん”やと思ってたんやな。

どっちがいい悪いではなくて、自分に合うか合わへんかっていう問題やし、どんな形にしろ選んだことなら頑張らなあかんとこは同じやけど、“こういうもん”が自分が求める形100%ではなかったことに、どこかで気付いたんやと思う。

素直な自分の気持ちを調整していったときに、意識が変わったんやろなぁ」
 
-“TAKAFIN”というキャラクターは、思い切り自信があり、揺るがずに存在しているものだと思っていました。
「いやいや、揺らぐって(笑)。これまでも迷いしかなかったよ。

俺はネガティブな性格やないけど、自信家やないねん。
できるだけ自然体でいたいけど、そのためには強い軸がないとあかんから、自信が持てるように考え方も変えていってるところやな。

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実は、自分の曲に関して『よっしゃ、ビッグチューン(※1)できたわ!』って自信満々で送り出せたことってこれまで1回もないねん。

もちろん、最大限のベストを尽くして作るけど、自分が自分に下す評価として、ちゃんと歌えてるんかな、ほんまにこれがベストなんかな、ってよぎったりもする。
自分の中のハードルをクリアできているのか、厳しく見てる。

フェスやライヴで各地に呼んでもらった時も、演る前は必ず予習するしリハもして、準備する。

ヒット曲や人気があればすべて解決することもあるけど、呼ばれた事実だけに状況を任せられるほど俺はビッグやないからな。
単独営業の時は、まだどのステージでも緊張するし。

だから、自分の足りてないところや欠点を見つけて、直したいって気持ちがあるねん。

自分の中の未熟さを受け止めて、それによって生まれる難題や感情を恐れたくはないし、出来ることを決め打ちせず限定せず、いろいろな可能性を探りたいと思ってるなぁ、ずっと」
 
-現状に満足せず、新しいフィールドを開拓する最中なのですね。
「どうやったらもっとええ曲が書けるやろとか、メッセージをもっと伝えていくにはどうしたらいいやろとか、細かいとこ見てったら悩みはキリないけどな。

でも最近になってやっと、イメージに近いものを作ったり歌えたり、具現化できてる気はする。
なんだかんだ悩まな最終的には出てこうへんものとは思うんやけど、でもそうやって悩んでる時点で、作り手としてはあかんと思うんやな。

例えばBACK YAAD(※2)から2011年にリリースしたEXPRESS(※3)の[もぐらの唄]。

俺はオケしか作ってないけど、EXPRESSにある出来事があって、それに対しての感情を、オケを聴いた瞬間そのまま歌にしたっていう背景があって、完全に歌ありきの曲やねん。

あれ聴いて、やっぱり歌って大事やなと思ったんやな。
聴いた瞬間、魂への届き方が違うし、何かを感じ取れる。目に見えないものが伝わるねん。

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リリック(※4)を書く時なら、レゲエやから韻を踏んだ方が作法に沿うし、聴いた感じも気持ちいい。

でも韻を踏んでなくても、直感的に出たリリックのほうが大事やったりするねん。
悩んでいろいろ試行錯誤してぐるぐる考えて、最終的に最初のもんに戻ったりする。

その時は、もう最初のでええわ、っていう妥協じゃなくて、やっぱこれや、っていう納得感をもって戻るんやな。

最初にピンと来たやつで合ってたんや、感情のままに出した方がええんや、っていうものにこそ手ごたえを感じることが最近よくあるし、その直感こそ大事なんかなって思うわ」
 
-感覚や感情から生まれるものにも、重きを置いているのですね。
「最近は特に、意識を、目には見えないものにフォーカスしてるかな。

例えば人との出会いとか、タイミング、勘、必然の連なり、運命的な流れとか。

だからいまは、感度を磨いていきたいと思ってる。五感以外で掴む感覚を伸ばしたい欲求もあるから、視野を広げようとしてる最中やな。
新しい物の見方をしていかんと、潜在的なものにも気付かへんからな。

俺には自信がないとこも心配性なとこもあるけど、不安を招かないように、望むことを実現できるように、いつでもポジティブな意識でいたいと思ってる」
 

アーティストTAKAFIN/プロデューサーBACKYAADIE、それぞれの「制作」

時に演じ、時に制作する、二つの面からのレゲエ的アプローチ

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-TAKAFINにお聞きします。歌を作るときのプロセスを教えてください。
「依頼されてオケが届いて、聴いて、感じるままに言葉を乗せる。

メロディラインが先に浮かぶことが多いから、流れを崩さないようにしながらいい言葉を当てはめていくかな。

リリックはまだまだ改善すべき点はいっぱいあるんやけど、いま思ってること、見つけた面白いアイデアなんかを落とし込みつつ組んでいく。

この作業に時間がかかることあるけど、最近は考え込みすぎず、初めの印象でひらめいた言葉を選んでいくようにしてる」
 
-BACKYAADIEにお聞きします。レーベル「BACK YAAD」が2016年で設立10年目を迎えました。
30歳をきっかけに新しいことに挑戦したくて始めたとのことでしたね。

「オケ(※5)を作ったりプロデュースをしたりすることも、自分を生かす道やと思って始めた。

20代はジャマイカでJTB(※6)のアルバム制作をやってたんやけど、スタジオでエンジニア(※7)の仕事を横で見て、次第に興味を持ったんやな。

で、5枚目のアルバム[BRAND NEW STYLE Hi-Fi(2005年)]で、シンガーソングライター兼プロデューサーのSERANIにオケを依頼した曲があるんやけど、RolandってメーカーのFantomっていうキーボード一台で作業してて。
機材一つでオケが出来るんや、って感銘を受けたんやな。

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それこそ最初は何やってるか分からんかったけど、制作全ての工程を理解していた方が自分らで手掛ける意味も深まるし、音楽として絶対に面白いと思って。
手探りやったけど、独学でミックスダウン(※8)やオケ作りのプロセスを学んだ。まだ勉強中やけどな。

せっかくジャマイカ行ってるのに、スタジオでぼーっと待ってるだけってのはもったいなかったしな(笑)。

ほんで自分でも機材を揃えて、実際に作り出して。

最初にリリースしたオケは55LEVEL(※9)の[TAKE YOU HIGH]やったね。
その後は未発表曲含め、大阪の若い歌い手たちにオケを提供したりして、徐々に広めていった」
 

やりながら覚えてきた音楽づくり。実際の制作プロセス

-オケはどのように作っていくのでしょうか?
「機材はまずmac。アプリケーションは、Logic Pro Xっていうソフトが母体やな。
キーボードはRolandのFantom X。ただの鍵盤として、ロジックの音を出すのに媒介として使ってる。

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まずLogicにビート(※10)を打ち込んで、上物(※11)を乗せてたたき台を作っておく。
でいったん寝かせた後、日を改めて音を足したり、細部をアレンジしたり、生楽器の演奏をプラスしたりして完成形に近付けていく。

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トラック数(※12)は平均15ほどやけど、レゲエは音数少なくてもいい音として仕上がるのが長所やから、足しすぎんように意識しながら作り込んでるかな。

ジャマイカ音源って俺にとっては全てお手本やけど、実際の作業としては、ゼロからイメージを膨らませて作るものあれば、何かを参考にすることもある。

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ただ俺自身、音符を読めるわけでもないし、広義的な音楽の基礎知識はないから、自分で弾くときは直感的にやってる。
本職の音楽家から見ると突発的な方法で進めてるときもあるやろな。

だから自分で出来ないことは、キーボディストやベーシスト、ギタリストとか本職のミュージシャンに弾いてもらってるよ。

で、仕上がったオケはアーティストに渡して、リリックとメロディを乗せて歌に仕上げてもらって、タイミングでスタジオを押さえて、録音する。

自分がイケてるって思った人に依頼して頼みたい思いもあるけど、BACK YAADは溜まり場から発信する曲を放つっていうのがコンセプトやから、周りのアーティスト中心に自然に曲が集まってくる感じやな」

-すべての作業を一人で手掛けているんですか?
「一人やな。だからゆっくりペースやねん(笑)。

でも自分から動かな何も始まらへんから。若い頃の向こう見ずな情熱を保ちながら、一つ一つの工程全てに手を抜かず取り組んでるよ」

シーンの中央に居続けてきたからこそ抱く、思い

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-この時代だからこそ、特に若い世代に向けて、伝えたいメッセージはありますか?
「いろんな若者と接してて思うのは、人との縁やつながりを、もっと大切にしたほうがええと思うことかな。

演者や裏方の場合やけど、音楽仕事ってものは、最初はまず趣味や情熱から始まるやろ。
なかなか“仕事”と“趣味”を線引きできないところもあるかもしれんけど、音楽やるならそこは気を引き締めておいた方がええな。

そこを超越する圧倒的な才能や知名度があれば別かもやけど、信用を無くしたら次がないし、置いていかれるで。

特に演者こそ、驕り高ぶったり、してもらって当然と思ったりせずに、気持ちよく付き合っていかな。
相手への思いやりも、未来のチャンスを生んでくれるものの一つだから。

ライヴだって、呼ぶって決意してもらって、ちゃんとギャラと場を用意してくれたうえで声かけてもらってるわけや。

楽曲作りも同じで、作品づくりに誘ってくれるってことが有り難いし自分にとってメリットになることのはずやで。
そこまで思いをかけてくれてることに気付き、みんながみんな、全力投球してほしい。

今の若い子らはみんなめっちゃうまいからさ。歌い始めた頃の俺より圧倒的にスキルがある。

だからこそ、潰れてほしくないねんな。
人との縁には何かしら意味があると思うから、大切にしたほうがええと思うで」

自ら率いて、自らを磨いて、行けるところまで行きたい

家族・仲間・環境に感謝しながら、レゲエを選び続けていく

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-いま抱いている夢や、これから叶えたい願いはありますか?
「1つ目は、みんなが音楽に集中できる環境を作ること。

鬱屈した状況があるならどうにか改善できたらええなと思う。
新たな層に届くようなビッグチューンを作り出す努力をして、みんなに恩返ししたいねん。

俺がこれまで頑張って来れたのは、喜びも楽しさも磨き合いもすべて共有できる仲間がいたからや。

家族や環境にも恩返しながらレゲエでずっとやっていきたいから、未来の環境づくりは人任せではなく、自ら率いてやっていきたい。

2つ目は、演者としてイメージ通りのものを作るために、スキルを上げて上手くなること。

聴いてくれた人の魂が震えるようなリリックを書きたいし、メッセージを伝えたい。
自分の持つものをより良く改善していきたい。

この2つの軸を実現したいという使命感は、昔からずーっとあるねん。
神頼みしてでも叶えたい、切実な願いなんやな。

だからこそ自分自身の全てを磨いて、力を付けたい。
揺るがぬ自分の軸をベースにいまを重ねて、ポジティブに生き抜いていきたいと思う」

 

Annotation
(※1)ビッグチューン…レゲエ用語で、ヒット曲の意。
(※2)BACK YAAD…TAKAFINがオーナー兼主宰を務める音楽レーベル。
(※3)EXPRESS…大阪のDeejay。
(※4)リリック…歌詞
(※5)オケ…楽曲のバックトラックで、インストゥメンタルを指す。リディムやトラックとも呼ばれる。
(※6)JTB…TAKAFINが所属するクルー、MIGHTY JAM ROCKのアーティスト部隊の総称。JUMBO MATTCH、TAKAFIN、BOXER KIDらDeejay3人からなる。
(※7)エンジニア…音楽録音物の制作を担うレコーディング・エンジニア。音響の調整や、録音工程の作業などを行う技術者を指す。
(※8)ミックスダウン…楽曲レコーディングの際、仕上がった楽曲の全体バランスを調整する作業を指す。トラックダウンとも呼ばれる。
(※9)55LEVEL…(※3)EXPRESSが所属していた大阪のDeejay集団。現在は解散。
(※10)ビート…音楽のリズムを指す。
(※11)上物…うわもの。ボーカルやメロディ、ソロ楽器などの音やメロディラインを指す。基本リズム以外のパートの総称。

 

Release Information

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from BACK YAADIE
[BACK YAADIE'S JAM VOL.2 / V.A.]
Now on Sale!
 

TAKAFIN a.k.a BACKYAADIE
大阪府出身。Deejay/Producer。MIGHTY JAM ROCKに所属しながら、ジャマイカとレゲエに沿った音楽活動を単独でも展開する。
●TAKAFIN official twitter  @MJR_Takafin
●official instagram ragga_takafin
●official blog TAKAFIN blog
●MIGHTY JAM ROCK official site MIGHTY JAM ROCK

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